節英のすすめ
脱英語依存こそ国際化・グローバル化対応のカギ!

木村護郞クリストフ 編

四六判並製 288頁 定価(2000円+税)
ISBN978-4-907961-09-1 C0080
2016年12月10日発行
2017年11月10日2刷発行

■電子書籍版
2017年5月15日発行

装幀:臼井新太郎


英語ができなきゃダメの脅迫観念から自由になり、節度をもって英語を使おうよ! と脱英語依存をすすめる。なぜ節英なのか、英語の光と影をさまざまな角度から検証。英語を飼いならす、りんご(隣語)をかじろう、意外と日本語でいける等々、節英の具体的な方法も満載。セツエイを国際語に!と提案する。節英から世界の別の姿が見えてくる。

「グローバル化時代」に対応するためにはひたすら英語力を高めていくしかない、あるいは、英語ができなければこれからの「グローバル化社会」でやっていけない、といった強迫観念から自由になろうよ! というのが本書の基本的な主張です。(「はじめに」より)


節英とは
自分の英語使用がどのような意味をもつかを自覚して、節度をもって使うこと

節度をもって英語を使うための指針
日本では「まずは日本語、できるかぎり相手言語、最終手段として英語」、海外では「できるかぎり現地語、あきらめずに日本語、最終手段として英語」

節英を行う際の心構え
【節英五か条】
第一条 何をしたいかを明確に
第二条 共通語(国際語)よりも現地語優先で
第三条 恥ずかしがらずに
第四条 他者の力を借りつつ
第五条 多様性を尊重する

■書評:「週刊新潮」2017/2/16号、関西エスペラント連盟機関誌「La Movado」796号、日本エスペラント協会機関誌「エスペラント」4月号「わたしの出した1冊の本」欄、「ことばと社会」19号(評者:塚原信行)、「社会言語学」XVII(評者:唐須教光/かどやひでのり)


●目 次
■第 1 部 なぜ「節英」なのか―国際語としての英語の裏側
○導入:英語の光と影

第 1 章 節電から節英へ
 節電の意義 / 「不足」ではなく「過剰」に対して / 過剰な英語依存!? / 「ポジティブ思考」をこえて / 「節英」とは何か
 《コラム1》日本で原発と英語の普及がが同時進行したのは偶然?

第 2 章 「9・11」と英語
 「9・11」は何を指すのか / 国際的な連帯感の断絶 / 英語の問題としての「9・11」 / 英語の「安全神話」の崩壊
 《コラム2》外国語教育から見た安保法制論議の落とし穴

第 3 章 「自国化」による情報伝達の屈折
 ドイツの「フクシマ」報道 / 日本におけるドイツの「エネルギー転換」報道 / 国際ニュースにおける英語圏の役割 / 英語圏バイアス / 英語圏=世界?

第 4 章 共通語の限界
 ことばが通じれば理解し合える? / 内側の視点と外側の視点 / 外からの視点では見えないもの / 国際ニュースの三つのバイアス

第 5 章 言語運用力の格差
 「ネイティブ」はここが違う! /「違い」が生み出す効果 / 「ネイティブ」同士・非「ネイティブ」同士の格差
 《コラム3》国際会議の英語事情

第 6 章 では、どうしたらいいのか
 もっと英語を? / 努力主義で大丈夫か / 言語的格差社会をめざすのか / 何を犠牲にするのか / バイアスの拡大 / 成り上がり戦略でうまくいかないわけ
 《コラム4》節電してみました

■第 2 部 節英はどのようにできるのか
 ○導入:英語は薬!

第 7 章 英語を飼いならす―「国際英語」という発想
 「ネイティブなみ」は現実的で妥当な目標か / 「共通語としての英語」 / めざすはわかりやすさ / ネイティブ英語に代わる国際基準とは / ネイティブに国際英語を教えよう! / 国際英語の効果と限界
 《コラム5》カタカナ語の功罪

第 8 章 国際語としての英語とどうつきあうか
 何をしたいかを明確に / 共通語(国際語)よりも現地語優先で / 恥ずかしがらずに / 他者の力を借りつつ / 多様性を尊重する / 節英五か条

第 9 章 りんご(隣語)をかじろう
 異なる視点への気づき / 言語の社会的な相対性 / 知のポートフォリオを豊かにする / 養子言語と言語分業社会 / お勧めのりんご―手話とエスペラント
 《コラム6》Ĉu vi estas Esperantisto?―ブラジルでの出会い

第10章 多言語とどうつきあうか
 第一条 何をしたいかを明確に / 第二条 共通語(国際語)よりも現地語優先で / 第三条 恥ずかしがらずに / 第四条 他者の力を借りつつ / 第五条 多様性を尊重する / 五か条を応用してみると
 《コラム7》理系研究者の言語事情―英語オンリーは非効率

第11章 意外と日本語でいける
 日本語による国際化 / 日本語の国際化 / 日本語のための国際化 / 国際語としての日本語
 《コラム8》日本語話したいのに―話してもらえない在日外国人

第12章 日本語をもっと活用するために
 通翻訳は使い得 / 漢字の功罪 / 言語は意味だけではない
 《コラム9》当世留学生日本語事情

■おわりに―私たちはどの方向をめざすのか
 エネルギーと言語の二つの方向性 / 行動の節英 / 構造の節英 / セツエイを国際語に!


●著者紹介
1974年名古屋生まれ。上智大学外国語学部ドイツ語学科教授、大学院グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻教員。専門は言語社会学、言語教育学。主に少数言語の維持・活性化、異言語間コミュニケーションを研究している。
主要著書に『言語にとって「人為性」とはなにか』(三元社、2005年、単著)、『媒介言語論を学ぶ人のために』(世界思想社、2009年、共編)、『言語的近代を超えて』(明石書店、2004年)、『マイノリティとは何か』(ミネルヴァ書房、2007年)、『バイリンガルでろう児は育つ』(生活書院、2008年)、『外国研究の現在と未来』(上智大学出版、2010年)、『言語意識と社会』(三元社、2011年)、『多言語主義再考』(三元社、2012年)(以上共著)など。



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