青年はなぜ死んだのか
カルテから読み解く精神病院患者暴行死事件の真実
嶋田和子 著
四六判並製 272頁 定価(2000円+税)
ISBN978-4-907961-14-5 C0047
2019年2月1日発行
■電子書籍版
2019年4月1日発行
装幀:西田優子
「精神医療の現実」第二弾!
青年は亡くなる少し前、母親に「僕の人生、どうしてこうなっちゃったんだろう」と言いながら涙を流したという。青年をあの事件のあった保護室まで運んでいったものの正体はいったい何なのか。多剤大量処方の末「飛び降り自殺」した青年の死の真実にも迫る。
8.3秒に1人が鍵のかかる個室に閉じ込められ、7.9秒に1人が縛り付けられているのだ。そして、精神病院の片隅で、人知れず、不審な死を遂げる人が、一日に60人。
どちらが狂気だろう。
さらにその予備軍として、精神科に通院している人は361万人以上いる。両手いっぱい、こぼれるばかりの薬を口に放り込みながら、ジワジワと人生の歯車を狂わせていった人が、いったいどれくらいいるだろう。
陽さんの物語と、直樹さんの物語。
声なき人たちの無念の思いが、せめて小さな声になり、少しでも形になればと思う。
もし、精神医療に改善の余地があるとしたら、まずこの現実をとことん見つめ直すこと。そこからしか始まらない。きれいごとの話など、いらない。(「どちらが狂気か」より)
●積み重ねると三〇センチにもなるカルテを一つ一つ丁寧に読み解くことで見えてきたものは……精神医療の恐るべき無責任さと冷酷さだった。●それを許しているのが日本社会に未だ巣食う「差別と偏見」だとしたら、誰もが青年の死と無関係とは言えない。
■書評:「週刊金曜日」2019/2/22号、「サンデー毎日」2019/4/7号(評者:三浦天紗子氏)、「婦人公論」2019/5/14号(評者:白石公子氏)
●目次
第一章 暴行死
事件 / 初公判 / 証拠映像 / 論告求刑 / 判決 / 不可解な判決 / 事件当日のカルテ / 病院側の認識 / I病院・元看護師の話 / 精神科の患者は暴力的なのか / 身体拘束・隔離 / プライド / 裁判で不採用となった現役看護師の意見 / 患者暴力の三つの要因
第二章 精神科受診
大学生 / アクチベーション・シンドローム / リスパダール / 薬が増える / ジプレキサ / 自殺未遂? / ベッドに座っている / 噴出する副作用 / ジストニア
第三章 さらなる悪化への道
坂道を転げ落ちるように / 思考障害 / 薬剤性パーキンソニズム / 磁気刺激療法 / 年賀状
第四章 三度目の入院
解体型統合失調症 / ECT実施 / 中止 / 放棄 / 難治性統合失調症 /
第五章 統合失調症とは何だ?
診断 / 別の見方 / 早発性痴呆 / ある精神科看護師の闘い / 暴力には理由がある / 人手は足りている / 社会が精神障害者を受け入れるか / 友人たち / 統合失調症ではない / 薬剤過敏と発達障害
第六章 精神科と自殺
大量の薬 / 問題の始まり / 死にたい気分 / 本人希望で増薬中 / 大学病院の高度医療 / 薬だけで何とかしようとする / 自閉症スペクトラムを有する統合失調症? / エビリファイ最大用量処方 / 冷酷な精神医療 / 減薬 / 現実が見えてくる / 救いはあるか / 足元の危うさ /
どちらが狂気か
●著者紹介
嶋田和子(しまだ かずこ)
1958年生まれ。早稲田大学卒業。1987年からフリーのライター。2010年6月にブログ「精神医療の真実 フリーライターかこのブログ」を立ち上げて体験談を募る。
主著:『私たちが、生きること』(ありのまま舎編、新潮社)、『大きな森の小さな「物語」―ハンセン病だった人たちとの十八年』(文芸社)、『ルポ 精神医療につながれる子どもたち』『発達障害の薬物療法を考える』(以上、彩流社)、『精神医療の現実―処方薬依存からの再生の物語』『〈向精神薬、とくにベンゾ系のための〉減薬・断薬サポートノート』(以上、萬書房)
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